企業版ふるさと納税のはじめかた

いきなり担当になった」人のために、制度・税の控除・手続きをやさしく整理するノートです

よくあるご質問(FAQ)まとめ

企業版ふるさと納税について、よく寄せられる質問をまとめました。詳細は各記事もあわせてご覧ください。

制度の基本

Q. 個人版ふるさと納税と何が違うの?
A. 返礼品がなく、最低寄附額は10万円から、本社所在地への寄附は対象外です。軽減のしくみも損金算入+税額控除と異なります。
Q. 正式名称は?
A. 「地方創生応援税制」です。2016年度に創設されました。

お金・税金

Q. いくらから寄附できる?
A. 1回10万円からです。上限額の定めはありません。
Q. 本当に9割も軽減される?
A. 損金算入(約3割)+税額控除(最大6割)で最大約9割です。ただし税額控除には上限があり、納税額の少ない企業はフルに使えないことがあります。
Q. 赤字でも使える?
A. 寄附自体は可能ですが、納税額が少ないと税額控除の効果が限定的になります。

対象・条件

Q. どの自治体にも寄附できる?
A. 国の認定を受けた地域再生計画の事業が対象です。本社所在地の自治体は対象外です。
Q. 返礼品はもらえる?
A. もらえません。経済的見返りの受領は禁止されています。

手続き

Q. 手続きは難しい?
A. 自治体への申込、寄附の払込、受領証明書の取得、申告という流れです。個人版より事務はありますが、流れは明快です。
Q. いつまでに寄附すればいい?
A. 事業年度内に行う必要があります。決算間際は手続きが間に合わないこともあるため、早めの相談がおすすめです。

その他

Q. 制度はいつまで使える?
A. 適用期限が設けられており、延長が繰り返されています。最新の期限は内閣府の公表情報をご確認ください。
Q. 人材も派遣できると聞いたが?
A. 「人材派遣型」を使うと、寄附とあわせて自社の社員を自治体に派遣できます。

※本FAQは一般的な解説です。個別の判断は内閣府の公表情報および税理士等の専門家にご確認ください。

導入企業の傾向と業種別の活用

どんな企業が企業版ふるさと納税を活用しているのでしょうか。一般的な傾向と、業種ごとの活用イメージを紹介します(特定企業の事例ではなく一般論です)。

活用が広がる背景

  • 2020年度の控除拡充で実質負担が約1割に下がり、参加のハードルが低下
  • CSR・サステナビリティ志向の高まり
  • 中小企業でも使えることが知られてきた

結果として、大企業だけでなく中小企業の参加も着実に増えています。

業種別の活用イメージ

業種相性のよいテーマの例
製造業地域産業の振興、ものづくり人材の育成
食品・農業関連農林水産業の支援、6次産業化
IT・通信地域のDX、教育のデジタル化(人材派遣型とも相性◎)
金融・サービス創業支援、移住定住の促進
建設・不動産まちづくり、防災・インフラ

活用パターンの傾向

  • ゆかりの地への寄附:創業地や工場のある地域を応援する
  • テーマ重視:自社のサステナビリティ方針に沿った事業を全国から選ぶ
  • 関係構築型:人材派遣型を使い、地域と継続的に関わる

参考になる情報源

内閣府が公表する活用事例集では、実際の寄附先や事業内容、寄附企業の声がまとめられています。自社に近い業種・規模の事例を探すと、検討のヒントになります。なお、業種別・都道府県別の集計値を社内資料に引用したい場合は、CC BY 4.0で再利用できるオープンデータも公開されています。

※本記事の業種別イメージは一般的な傾向であり、特定企業の事例ではありません。

寄附先プロジェクトの選び方

企業版ふるさと納税で意外と悩むのが「どの地域・どの事業に寄附するか」です。後悔しない選び方の視点を紹介します。

選び方の5つの視点

  1. 自社の理念・事業との関連
    自社の価値観や事業領域と関係するテーマを選ぶと、社内外への説明がしやすくなります(例:食品メーカーが農業振興を支援)。
  2. ゆかりのある地域
    創業の地、社員の出身地、取引先のある地域など、ストーリーを語れる地域は社内の共感を得やすいです。
  3. 応援したい社会課題
    子育て、環境、教育など、力を入れたいテーマから事業を探す方法です。
  4. 自治体の本気度・透明性
    成果報告や情報公開がしっかりしている自治体は、寄附後の満足度が高い傾向があります。
  5. 関係を継続できるか
    単発で終わらせず、人材派遣や継続寄附につなげられる相手かを見ると長期的な価値が生まれます。

情報の集め方

社内合意のコツ

寄附は経営判断を伴います。「なぜこの地域・この事業なのか」を一言で語れるストーリーを用意すると、社内稟議や対外発信がスムーズになります。税の軽減額だけでなく、共感できる物語を選定基準に加えましょう。

※事業内容・成果は自治体の公表情報でご確認ください。

SDGs・地方創生との関係

企業版ふるさと納税は、単なる税制ではなく、企業のSDGs・サステナビリティ経営や、国の地方創生政策と深くつながっています。その関係を整理します。

地方創生政策の一翼

この制度は、東京一極集中の是正と地方の活性化を目指す「地方創生」政策の中で生まれました。民間企業の資金と人材を地方の課題解決に呼び込む仕組みとして位置づけられています。

SDGsとの親和性

寄附先の事業は、SDGsの目標とそのまま結びつくものが多くあります。

  • 子育て・教育支援 → 目標4「質の高い教育」
  • 環境・再エネ → 目標7・13「エネルギー」「気候変動」
  • 産業・雇用創出 → 目標8「働きがいと経済成長」
  • 地域づくり → 目標11「住み続けられるまちづくり」

寄附を通じてこれらに貢献することで、企業のSDGsの取り組みとして対外的に説明しやすくなります。

サステナビリティ開示への活用

近年は非財務情報の開示が重視されています。企業版ふるさと納税による地域貢献は、統合報告書やサステナビリティレポートの具体的な取り組み事例として記載できます。

「投資」としての地域貢献

寄附を一方的な支出ではなく、地域との関係構築・将来の事業機会への布石ととらえる企業も増えています。社会的価値と経済的価値を両立させる発想が、これからの活用のカギになります。

※開示方法は各種ガイドラインや自社方針に沿ってご判断ください。

会計処理・仕訳の実務ポイント

企業版ふるさと納税を行ったら、経理・会計の処理が必要です。基本的な考え方と仕訳のイメージを解説します(具体的な処理は必ず税理士にご確認ください)。

基本の考え方

寄附金は会計上「寄附金」として費用計上します。税務上は全額が損金に算入され、さらに別枠で税額控除が適用されます。会計(損益計算)と税務(申告調整)を分けて理解するのがポイントです。

仕訳のイメージ

たとえば100万円を寄附し、銀行口座から支払った場合の基本的な仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
寄附金1,000,000現金預金1,000,000

この「寄附金」が損金に算入されます。税額控除は、法人税・地方税の申告書上で処理するため、上記の仕訳とは別の手続きになります。

申告での処理

  • 損金算入:寄附金は別表で損金として扱われる(一般の寄附金とは扱いが異なる)
  • 税額控除:法人税・法人住民税・法人事業税それぞれの申告書で税額控除を適用する

実務で注意したいこと

  • 受領証明書を申告書類とひもづけて保管する
  • 複数年度・複数自治体にまたがる場合は管理表を作ると漏れを防げる
  • 税額控除の上限計算は複雑なため、申告ソフトや税理士のチェックを活用する

※会計・税務処理は企業の状況により異なります。実際の仕訳・申告は必ず税理士にご確認ください。本記事は一般的な解説です。

禁止事項とよくある誤解

企業版ふるさと納税には、制度の趣旨を守るための明確なルールがあります。知らずに違反すると寄附が対象外になることもあるため、しっかり押さえておきましょう。

最も重要な禁止事項:経済的見返りの受領

寄附の代償として経済的な利益を受け取ることは禁止されています。具体的には次のようなケースが該当します。

  • 寄附の見返りに補助金や事業の便宜を受ける
  • 寄附を条件に有利な契約・入札を受ける
  • 返礼品にあたる物品・サービスを受け取る

これらは制度の公平性を損なうため、明確に禁止されています。

その他の対象外ケース

  • 本社所在地の自治体への寄附
  • 地域再生計画に該当しない事業への寄附

よくある誤解

  1. 「返礼品がもらえる」→ 個人版と混同した誤解。企業版に返礼品はありません。
  2. 「実質負担ゼロ」→ 最大約9割の軽減で、約1割は持ち出しです。
  3. 「節税のためだけの制度」→ 本来は地方創生への貢献が目的。見返り目的の運用は趣旨に反します。
  4. 「どこにでも自由に寄附できる」→ 認定事業が対象で、本社所在地は不可。

健全に活用するために

「税の軽減」と「地域貢献」は両立しますが、見返りを期待した取引的な発想は禁物です。純粋に応援したい地域・事業を選ぶことが、結果的に企業価値の向上にもつながります。

※禁止事項の詳細は内閣府の公表情報をご確認ください。

制度の歴史と延長の経緯

企業版ふるさと納税は、創設から拡充・延長を重ねてきました。経緯を知ると、制度がどの方向に進んでいるかが見えてきます。

主な経緯

時期できごと
2016年度(平成28年度)「地方創生応援税制」として創設
2020年度(令和2年度)税額控除割合を最大6割に引き上げ(実質負担を約1割に)。人材派遣型を創設。適用期限を延長
その後の改正適用期限がさらに延長され、活用が拡大

2020年度改正がターニングポイント

創設当初は税額控除が最大3割で、損金算入と合わせても軽減効果は約6割でした。2020年度の改正で税額控除が最大6割に倍増し、損金算入とあわせて最大約9割の軽減となったことで、利用が一気に広がりました。

拡大する活用

制度の魅力向上と、企業のCSR・サステナビリティ志向の高まりが重なり、寄附の件数・金額はともに伸びています(年度別の受入額の推移で確認できます)。中小企業の参加も増えています。

今後を見るときの注意

適用期限は延長が繰り返されてきましたが、恒久制度ではありません。中長期の取り組みに組み込む場合は、必ずその時点での最新の適用期限と控除割合を確認してください。

※具体的な年度・割合の最新情報は内閣府および税制改正の公表資料でご確認ください。